
雇用の流動化に賛成だが、その前にやることがあるのでは?
1999年。就職活動に失敗した小生は、1年間の警備会社でのアルバイトの末、
やっとの思いでヒーターを扱う小さな会社に入社した。
本当にやりたかったことは別にあったが、新卒ではなくなったという理由だけで
選考の対象にすらなれず、かと言って、一般の求人では即戦力を求められるケースが
多かったため、これもまた選考の対象にならなかったのだ。
あれから10年以上の月日が流れたにもかかわらず、いまだに新卒中心の採用を
続けているが故に、結果的に就職活動に失敗した大学生が新卒枠で就職するため、
あえて留年するといったバカなことが未だに起きているのが情けない。
正社員を解雇しやすくするためのルールを作る代わりに、年功序列と年齢給を廃し、
その人の能力、業務内容で給料を決定することにより、卒業から時間が経過した
元学生の就職や、中高年にも転職できる道を開くという考え方には賛成だが、
それには十分な求人数があることが前提となる。イス取りゲームのイスが少なく
なってしまっては、単に失業者が増えてしまうだけだろう。リーマンショックのあと、
ニュース番組の特集等で『派遣切り』に遭った人たちが老人ホームでの介護の職に
就いたり、農業法人で野菜作りを始めた人を取り上げていたが、これらの人たちは、
失業率を下げることには寄与しているだろうが、その労働に見合った給料を貰って
いるのだろうか。もしかしたら、高い付加価値を生み、他国がなかなか真似出来ない
新しい産業(できれば複数が望ましい)を育てないと、将来は厳しいものに
なってしまうかもしれない。
労働市場を流動化しないと日本は滅ぶ
本書は終身雇用制度の残骸である「年功序列制度」と「正社員の解雇制限」がいかに日本社会に害悪をまき散らしているのかを解き、それらを廃して労働市場の流動性を高める方法を提案している。
終身雇用制度が崩壊したと思っている人は多いかもしれないが、それは半分正しいが、半分間違いである。
「年功序列制度」と「正社員の解雇制限」は未だに存在しているのである。
自分も大企業勤めなのでそれを実感している。
このため、年齢の高い正社員がたいした仕事もせずに未だに高い賃金をもらい、そのツケを新卒雇用枠の縮小と非正規労働者で補っているのが実状である。
高齢の正社員にしても一度会社を離れると再就職先がないので必死にしがみつくしかない。
年功序列制度では35歳までが転職の限界なのである。
これでは人生の計画の自由もないし、転職がやりにくいのでスキルも上がらない。
それらを解決するために本書は金銭解雇制度(会社は自由に解雇を行うことができるが、解雇された従業員に金銭を渡す必要がある)と職務給(仕事内容だけで賃金が決まる)で雇用を流動化するべきとの主張を行っている。
私的には雇用の流動化に賛成であるし、本書の主張はおおよそ正しいと思われるが、少し気になることがいくつかあった。
1.年功序列制度を解消できるかどうか疑問
儒教の影響を受けている日本では上司が若くて部下が年寄りという状況を避ける傾向にある。
職能給の導入で完全に年功序列制度が解消できるかどうか疑問である。
さらに会社の上層部にいる高齢者が金銭解雇や職能給を悪用し、入社する若年層を使い捨てにして自分たちだけ儲けることも可能になりそうである。
しかし、雇用が流動化されていればそんな会社は辞めてしまっても良いという見方もできる。
2.消費税の増税に効果があるかどうか疑問
著者は消費税を早く増やさないと国が破綻する、景気の回復を待つ必要はないと主張する。しかし、増税をして経済が復活した国があるのだろうか。
景気が回復する前に増税をするとモノが売れなくなり、さらに景気は後退し、税収も減るのではないか。
本末転倒になる可能性が高い。
さらに著者は「消費税は弱者に厳しいとの声もあるが、そもそも弱者向けの政策に割り振るのだから問題ない」(P211)と主張するが、言い換えると「弱者が支払う税金よりも多い税金を弱者に返す」ということではないか。
下手をすると、社会復帰する気のない生活保護受給者を増やすだけにならないのだろうか。
3.若者の自業自得な面を棚に上げている
バブル世代〜現在の若者(20代〜40代)には共通の特徴がある。
・芸能とスポーツしか関心がない
・もちろん選挙に行かない
・勉強と言えば、せいぜい受験勉強しかしない。大学に入るとバイトして遊び呆ける。
・主体性がなく自己啓発をしない
・努力する人間をバカにする
企業が若者を雇わないのも、30代、40代の社員の給料が上がらないのも、このような若者の自業自得な面もある。
本書でも上述の一部が指摘されているが、若者は悪くないという姿勢である。
しかし、若者も悪いとハッキリと言うべきである。
著者は森永卓郎らしき人物を「大衆向けのアジテーション」と批判するが、若者を非難しない著者も同罪ではないのか。
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本書の最後に「201X年・明るい未来」と題して、雇用の流動化による明るい未来を解いているが、実際にここまでうまく行くかどうか疑問である。
雇用の流動化によって到来する公平な競争社会は、能力による貧富の差を生む。
現在のような世代による貧富よりはマシであり、そうしないと日本は滅んでしまう。
しかし、本書では「能力による貧富の差」にはほとんど触れていないことに気をつける必要がある。
私的には「能力による貧富の差」は必要だと思っている。
若者3部作の最終作
著者が言うには「若者はなぜ3年で辞めるのか」「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」に続く若者3部作の最終作です。
前2作も読んできましたが、今作は具体例を豊富に出して「これでもか」と言うぐらいに現在日本で起きている雇用の問題点
を書き出しています。
派遣と正社員の雇用問題、女性を活用出来ていない問題、高学歴ワーキングプア問題などなど、これ1冊を読めば今日本で
起きている雇用に関連した問題点はあらかた掴めるかと思います。
最近でこそこの手の問題を指摘する意見は聞かれるようになってきたと感じてはいるが、まだまだ認識していない無関心
な人も大勢いるので、「今の日本は何でこんなに住みにくくて閉塞感が漂っているんだろう?」と感じた人には是非とも
読んでもらいたいと思います。
きっと、閉塞感の正体が見えてくるでしょう。
終身雇用・年功序列制度を改めなければ、日本の未来は無いだろう。鎖国でもするなら別だけど。
戦後に生まれ、一時はミラクル日本の原動力とも言われた終身雇用制度。
未練やノスタルジーはあるが、もうこのままでは持たないことが、
明確に説明されている本です。
現在の採用制度は、大卒・新卒が前提になっているし、会社や人口が拡大することも、
終身雇用・年功序列制度の前提になっています。そして年齢給があるために、
年齢の高い人が不利になっているのです。また、
政府主導で、博士号を持つ人や弁護士・会計士を増やしてみたものの、
雇用制度・受け皿の見直しが全くなされておらず、がんばって勉強した人が
フリーターになってしまっています。著者の言うとおり、政府がまず、
博士号や弁護士資格を持つ人を上級公務員として採用すべきでしょう。
一方で、労働者を守るはずの既存勢力も、社員になった人の既得権益を
守ることが目的になってしまっているようです。「フリーターを社員に!」と叫んだところで、
その枠組みでは、全体で社員になれる人数が限られてしまうという矛盾があるのです。
「老人は弱者」という決め付けも改めるべきでしょう。某航空会社の年金受給者
の方のように、会社を存続させ、若者の雇用を確保するために、涙を飲むことも
必要になってくるでしょう。
「正社員の保護を図ることが、これから社会に出ようという人々に、大きな不利益を
与えている」という仕組みを政府や多くの国民が理解する必要があると思いました。
この本が多く売れていることが、せめてもの救いです。
社会全体の緩やかな下降
日本人にとって、身分制度の閉塞感は普段から感じられることだと思う。
この本も、同じような閉塞感に喘ぐひとたちが描写されている。
今の社会の仕組みは、高度経済成長をしていたころのまま。
だから会社が拡大するのが前提にポストが用意されている。
年寄りが残り、若者がやる気をなくす。
これは日本社会全体の問題。
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